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投稿しました



 投稿しました。原稿にして六枚、動画時間にして10分程度の短いノベルです。
 昨日投稿するつもりだったのですが、エンコードが大変だということをすっかり忘れていました。
 つんでれんこなど、ニコニコで定番になっているエンコーダを色々と試してみたのですが、結局wmv形式のまま直接放り込みました。画質はあまりよくないですが、文字もつぶれてないし、まあ、いいかな。

 もし感想があれば、ニコニコのほうにコメントしてくださると嬉しいです。
 上の動画を再生中にクリックすれば飛びます。

 さ、続編の背景を作ろう。
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ノベルの背景

湖 ゆめ

 のっけから見苦しいものを見せてすみません。ノベルの背景のために、先程までつくっていた絵です。
 絵は文字とフィルターに隠れてしまうので、こんな絵でも一応背景として使えます。
 元々ネットで適した画像を探して使っていたのですが、それだと合うものがなかなか見つかりませんでした。
 たとえば、深夜に部屋で話し合うシーンであっても、ちょうど調度品の配置や雰囲気がうまく合っている写真がみつかっても窓の外は明るかったり、白い彼岸花が群生している絵か写真を背景にしようとおもっても、たとえば一輪の絵や、数本を撮っているものは背景には使えない。群生している写真が見つかっても、他の花がたくさん雰囲気をこわしている、なんてことがありました。
 私のノベルが特殊なところを舞台にしている、ということもあるのですが、二、三枚の背景を探すのに一日がかりで、しかも条件にぴったり合わないものを妥協して使わなければいけない。
 なら、自分で書いたほうがまだ早いな、と思って描きはじめました。
 もちろん上手いにこしたことはないですが、ともかく舞台条件さえ満たしていればいいのです。

 ちなみに、上の絵の舞台条件は、
・ 青い薔薇の茂みに囲まれたちいさな湖
・ さとり(妖怪のいち種族)のお母さん、とその子ども

 の二つです。
 絵、うまくなりたいですね。私はノベルの背景でしか書かないから、あえて枚数増やして練習してみようかと思います。

霧雨魔理沙考 バイオリン、母の面影

 あの夜、少女がススキの原っぱにねそべって、トンボにお話を聞かせた夜、魔理沙も、同じ星空を眺めていました。そして、少女とはべつの、ある女の子のことを思い出していました。


 女の子は、お金持ちの家のお嬢様でした。生まれつき体が弱くて、病気がちだったので、ほとんど家から出られず、学校にも行けませんでした。町のほうから友だちがお見舞いにきてくれることもありましたが、女の子のいるお屋敷は町から離れたところにあったので、たびたびというわけにはいきませんでした。それに、お母さんは女の子がまだ赤ん坊だったころに亡くなっていました。
 お父さんは、まだ小さいのに母親をなくして、友だちとも満足に遊ぶことのできない娘に、これ以上不憫な思いはさせまいと、娘が望むものはなんでも買ってあげました。あるとき、お父さんはバイオリンを女の子に買ってあげました。お父さんは、娘を演奏家にしよう、音楽を教えようというつもりはなく、ただ気慰みになればと思ったのです。けれどそれ以来、バイオリンをひくことが女の子の一番の楽しみになりました。


 魔理沙はそのころから、魔法使いになるために勉強をしていました。寺子屋でも、まわりの子供がお習字をしているなか、ひとりぶ厚い古代言語の本を開いていることもよくありました。
 魔理沙とお父さんは、魔理沙の将来について何度か話しあいました。店で修行を積むか、せめて世の中の役に立つ学問に身を置くように、というのがお父さんの意見でした。魔理沙はいつも、尊敬しているひとが魔法使いなので、そのひとのようになりたい、としかいいませんでした。それに、魔理沙には、魔法使いになってその後どうする、という考えはまったくなかったのです。お互い歩み寄る見込みはすこしもありませんでした。

 魔理沙のお父さんは、霧雨店という大きな道具屋の主人でした。魔理沙と同じ年のころから、霧雨屋の小僧として働いていたので、放っておけば働きもせずに、へんな本ばかり読みあさっている娘のことを、よく思っていませんでした。それに、魔女は人間に厄災をもたらすという、昔からの言い伝えもありました。人間と仲のいい魔法使いの話など、おとぎ話にしかありませんでした。
 お父さんは、お店でちょっとしたことがあるたび、部屋にこもっている魔理沙を呼んで、用事を言いつけました。お父さんは魔法のことはよく分かりませんでしたが、少しでも働くことの何たるかを学んでくれれば、と考えたのです。

 魔理沙も、そんなお父さんのことをよく思っていませんでした。魔法使いにとって、時間がどれほど貴重かわかっていない。それどころか、じつの娘よりもお店のほうが大事なんだ。お店の前にたって、お客とにこやかに話す父と、一度でも自分にたいして笑いかけたことのない父とを比べると、魔理沙はいっそう、お父さんが自分のことを愛していないように思うのでした。


 女の子の家は、霧雨店のお得意さんでした。魔理沙のお父さんは、女の子の家に届け物があるたび、魔理沙に持っていかせました。魔理沙はいつも、家のひとに品物をわたすとすぐ、屋敷の北側にある大きなはんの木の下にゆきました。そこからは、変わった飾りのついたしろい出窓をとおして、バイオリンを弾く女の子の姿が見えました。

 お父さんが言いつける用事のなかで、魔理沙はこの用事だけは好きになれました。家のひとはとても気さくだし、バイオリンの音色にもひかれました。お店からだと遠いですが、お父さんに内緒でほうきに乗っていけば、のんびりする時間は十分ありました。
 ちいさな魔理沙はここで、大きなはんの木に身をもたせて、バイオリンの調べに耳を傾けたのでした。


 そんなことがつづいて、家の人とも親しくなったあるとき、魔理沙は、いつもどおり品物をわたすと、女の子のお父さんに呼びとめられて、屋敷にあがるように言われました。
「あなたが、屋敷の外で娘のバイオリンを聞いているのを知っている。娘の部屋でなら、もっとよく聞こえるでしょう」
 と、女の子のお父さんはいいました。魔理沙は、あなたなんて呼ばれたのは初めてでしたから、すっかり恐縮してしまいました。

 二階にあがって、北側の部屋のドアを開けると、そこには、いつもしろい出窓からみえていた、あの女の子がいました。その日から、魔理沙ははんの木の下ではなく、女の子のそばで、女の子のバイオリンを聴くようになりました。

 最初の日は、二人とも挨拶ていどしかできませんでしたが、女の子と魔理沙は、すこしづつ、お互いに気を許すようになりました。はじめに、バイオリンの曲や、魔法使いについての話をしました。それからうちとけてくると、お互いの話を、とくにお母さんの話をするようになりました。

 二人とも、お母さんを早くになくしていたので、お母さんの写真を持ちよって、お母さんがどんな人だったか、という話をするのでした。その話には、お父さんや家の人、お店の人から伝え聞いた話もあれば、その話にもとづいた創作ということもありました。

 魔理沙は、それが創作のときは、きっとこうだと思うけど、と前置きすることもあれば、そうでないこともありました。それは女の子にしても同じでした。そんな話をくりかえすうちに、二人は、実際には覚えていないはずの母親の面影を、はっきりとまぶたの裏に映すようになりました。

 魔理沙は、女の子と話をするようになってから、より熱心に魔術書を読むようになりました。修養のためではなく、女の子に話してきかせるためです。

 女の子は、魔理沙と話をするようになって、より長い時間バイオリンを弾くようになりました。女の子のバイオリンは、それまでとは明らかにちがってきこえました。女の子は、日々バイオリンから違った音を聞くことが、楽しくてなりませんでした。

 それから、魔理沙にきかせるために、お父さんや家の人にお母さんの話をお願いするようになりました。聞いた話が、女の子の想像とくいちがっていたときは、女の子は目に見えて機嫌が悪くなりました。たとえば、女の子がはじめて鶏肉を口にしたときのことです。

 女の子の家では、夕食だけは家の人も家族も同じテーブルを囲んで、同じものを食べる、というのが慣わしになっていました。家族といっても、女の子には兄弟もお母さんもいませんでしたし、そうなると世話をする人も少なかったので、結局女の子とお父さんを合わせて四人か五人でテーブルを囲むことになりました。

 テーブルにはいつも、女の子が望むものがならびました。といっても、ごうぜいな夕食になるわけではありません。女の子はお肉をまったく食べなかったので、たいてい、スウプに、パン、サラダ、それになにかデザートがつきました。

 家の人とお父さんは、それでものたりなかったときは、女の子に分からないように調理場にいって、ハムをサンドイッチにして食べました。それでも、ビーフブイヨンのスープや、チーズとベーコンのたっぷりかかったシーザーサラダなどが食卓に並んだときは、みな、食事に舌鼓をうったあとで、女の子は気を使って、むりにこってりしたものを献立にしたのだろうかと、考えました。

 女の子はそれほど粗食でしたが、お父さんも家の人も、そのことを苦しく思ってはいませんでした。亡くなったお母さんも、女の子と同じくらいに粗食だったからです。それに、同じテーブルを囲んで、同じものを食べることが大事なのだと、みな思っていたのです。

 それで、魔理沙と女の子が会うようになって二ヶ月ほど後の、ある朝のことです。女の子はいつになく体調がよくて、めずらしく庭に出て、散歩をしていました。女の子はほとんど外に出られなかったので、こんなことでも大きな楽しみになっていました。庭には、ほんのりと朱のさしたつつじの花壇が並び、よく茂った柿の木が木漏れ日をつくって、女の子の歩く路をまばらに染めていました。

「おはようございます、お嬢様。今日のお夕食はどうなさいます」
 と、コックさんが女の子にたずねました。このコックさんは庭師もかねていて、いまは、梯子にのぼって、屋敷のほうに伸びすぎた木の枝を切っているところでした。
「ちきんにしましょう」
 と、女の子は答えました。庭師のコックさんは梯子のうえで、思わず自分の身だしなみを確かめました。きちんとしましょう、というふうに聞こえたからです。でもすぐに、聞きまちがいに気がつきました。
「チキン、といいますのは?」
「このまえ、チラシで見たの。こういうの」
 といって、女の子は手首をまげて、九十度をつくりました。
「そうですか。味付けは、なにがよろしいですか?」
「わからないわ」
「では、お任せくださいますか」
「もちろん」

 コックさんは庭での仕事を終えると、念のためお父さんのところに相談に行きました。女の子がお肉を食べるなんて言い出すのは、初めてだったからです。コックさんから話を聞いたお父さんは、友人で、女の子を診たこともある医者に電話をしました。

「そりゃ、食べたいということは、体が欲しているということだ。あの子にはアレルギーはないんだから、心配しなくていいよ。それとも、きみは自分の娘をヤギかウサギだと思ってるんじゃないだろうな」
「わたしも、こんなことを聞くのはへんだと思ったさ。しかし、娘がお肉を食べたいなんて言い出すのははじめてなものだから」
「もっと良いほうに考えたまえ。これは、あの子の病気が快方に向かっている兆候だよ。私が担当医なら、処方箋に『チキン』と大きく書いてやるところだ」
「きみならやりかねんな。それじゃ」

 お父さんは、受話器を置きました。

「夕食は、チキンにきまった」
 とお父さんはいいました。
「味付けがきまっておりません、旦那さま」
 とコックさんがいいました。そして、鶏肉をどう調理するのがいいか、どんな味付けがいいか、二人で議論しました。こうなると、なんとしても女の子においしいと言わせたいところでした。なにしろ、今後の食卓にお肉が並ぶかどうかがかかっていたので、議論には熱がはいりました。


 いよいよ、食卓にお肉がならびました。それは、香草と、パン粉のかかったチキンを、オーブンで焼きあげたもので、添えものにマッシュポテトがついていました。女の子がチラシで見たとおりになっていました。
 女の子はまだ、フォークとナイフを一緒に使ったことがなかったので、お父さんがすぐとなりに座って、持ち方を教えてあげました。お父さんは、ナイフとフォークを使って、器用に骨から肉を切りはなすと、チキンをおいしそうにほおばりました。
 女の子は持ち方をなおしたり、お父さんの食べ方をみたりするうちに、なんとかそれらしくナイフとフォークを扱えるようになりました。
 お父さんが、おいしいか?ときくと、女の子ははっきりと、おいしい、と答えました。それで、お父さんは安心して、あとは女の子が食べるのに任せました。
 チキンは申し分ないできばえでしたし、女の子もおいしそうに食べていましたから、なにもいうことはないように思えました。

 みなが、テーブルにあるものをおおかた食べおえたころ、お父さんは、女の子のまえのチキンがもう骨だけになっているのをみて、おやと思いました。女の子はいつも少ししか食べませんでしたが、それでも、お父さんより早く食べおわることはありませんでした。しかも、使いなれないナイフとフォークを使っての食事だったので、なおさら、もうか、という気がしました。

「チキンはおいしかったか?」
 とお父さんはもう一度女の子にたずねました。
「ええ、とっても。また食べたいくらい」
 と女の子は答えました。だれも見ていませんでしたが、このときコックさんの目がきらりと光りました。
「しかし、ずいぶん食べるのがはやかったじゃないか」
「見ていらっしゃらなかったのですか」
 と、このときお皿をかたしていた家政婦さんがいいました。
「お嬢様は、とちゅうから、手をつかって召し上がったのですよ。だからはやかったのです」
「なんだ、気づいていたなら、注意しないとだめだろう」
「でも、ぜんぜんおかしく見えなかったので。旦那さまだって、隣にいて分からなかったじゃありませんか」
 お父さんは女の子のほうに向き直ると、
「次からは、ちゃんとナイフとフォークを使うんだぞ」
 といいました。すると、女の子は、
「でも、お母様だって、手で食べてらしたでしょう?」
 と、こういいました。
「お父様が召し上がっているのをみて、お母様はそうはしなかったという気がしたのです。だから、お母様がするように食べたのです。お父様の食べかたがおかしいというわけじゃないけれど……」
 それを聞いたお父さんは、一瞬、言葉を失いました。
 もう一度、
「ちゃんと、ナイフとフォークを使って食べなさい」
 といいました。それから、
「お母さんは、けしてそんな食べかたはしなかった」
 と、語気を強くして言いました。
 お父さんがそんなふうにものを言うのは、とてもめずらしいことでした。女の子はそれを聞くと、口をきゅっとむすんで、そのままなにもいわずに、二階の自分の部屋にもどりました。

「どうして、あんなことをいわれたのです」
 女の子が部屋にはいってから、家政婦さんはお父さんにいいました。
「形ばかりのお作法なんて、どうでもいいじゃありませんか。お嬢様は、奥様とおんなじで、ほんものの貴婦人でいらっしゃいます。魔理沙さんと親しくなって、ますます奥様らしくなられて……」
 お父さんは家政婦さんの言葉をさえぎって、
「真似をすればいいというものではない」
 といって、そのままだまってしまいました。

 家政婦さんは、まだ納得のいかない様子でしたが、お父さんにこう強く言われると、なにもいえませんでした。

 お父さんが自分の書斎にもどってから、食事の片付けが終わったころ、コックさんと家政婦さんは、調理場にちいさなテーブルを置いて、そこで一息つきました。そこで、コックさんは家政婦さんに、
「奥様は、薄命でいらしたので」
 と、ぽつりといいました。家政婦さんは、すぐには何のことか分かりませんでしたが、しばらくして、そうでしたね、と呟きました。

 その後、しばらくのあいだ、これまでどおりお肉のない夕食が続きました。

BGM:

ドビュッシー
亜麻色の髪の乙女

フォーレ
無言集一番

無言集三番

サティ
あなたが欲しい

ピカデリー

ジャンル : 小説・文学

テーマ : 自作小説

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