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本好きバトンに答えてみた

本好きさんに50のバトン

Q1 今現在、私有の本は何冊ある?(漫画は抜きです)
A1 たぶん200くらい。読んだものは売っているので、家にあるものはすべて未読です。
Q2 好きな作家さんは?
A2 志賀直哉
Q3 お気に入りの本は?
A3 罪と罰
Q4 海外文学派?日本文学派?
A4 どちらかというと海外文学派
Q5 持ってる本で、一番多いジャンルは?
A5 純文かな。古典ともいいますが。
Q6 映画化して欲しい作品は?
A6 特にありません。しいてあげるなら、志賀直哉の清兵衛と瓢箪、とか。ローラーとバイオリンみたいな演出にしてほしい。
Q7 一生に一度は絶対に読むべきだ!と思う本を一冊
A7 リルケ詩抄
Q8 今までで落胆した本ってある?
A8 諏訪哲史のアサッテの人 。
Q9 逆に、予想以上によかった本は?
A9 シリオの小屋
Q10 文庫本と単行本、どちらの方が多く持ってる?
A10 文庫本
Q11 本をたくさん読みはじめたのは、いつくらいから?
A11 中学からかな?
Q12 月に何冊くらい読む?
A12 六冊くらいだと思う。
Q13 図書館や本屋で、最大何時間いたことがある?
A13 勉強に使うから、最大だと十時間
Q14 本を選ぶ時の決め手となるのは?
A14 みな同じだと思うけど、ぱっと見て面白そうと思ったものは大抵買う
Q15 どんなジャンルの本が一番お好み?
A15 児童文学、かな?
Q16 全部集めてる!って作家さんは、何人くらいいる?
A16 読んだものは売ってるからなあ。
Q17 ちなみに、それは誰?
A17 家にあるのは、ドストエフスキー。
Q18 現実的な物語と、非現実的な物語、どちらがお好み?
A18 現実的な作品のほうがすき。
Q19 本の表紙に惹かれて買ってしまうことがある。
A19 ない。
Q20 月に本に費やす費用はいくらくらい?
A20 10000くらい?
Q21 最近、一番最後に読んだ本は?
A21 埴谷雄高の死霊
Q22 ずばり、活字中毒である
A22 たぶん違うとおもう
Q23 整列した大量の本を見ているだけで満足する
A23 しない
Q24 実は本コレクター?
A24 ちがうなあ
Q25 いやいや、むしろ図書館に住みたい
A25 住みたい
Q26 ケータイ小説、読んだことあります?
A26 ない。どうして、ケータイで活字を読まなきゃいけないのか疑問に思う。
Q27 実際、本を買ったことは?
A27 もちろんある。
Q28 それは、何と言う本?
A28 一番最近買ったのは、ギリシア神話の本
Q29 最近流行りのケータイ小説について、どう思いますか?
A29 流行ってるとは思わないし、とくに意見もない。
Q30 外出するときでも、常に一冊は携帯してる?
A30 してる
Q31 今までで一番読み返した本は?
A31 罪と罰
Q32 ぶっちゃけ、買ってから読んでない本が結構ある?
A32 沢山ある。家にあるのは殆ど未読の本
Q33 自分の書斎部屋を持っている!
A33 ないけど、ロフトに大量に積んである
Q34 実は、小説を書いたことがある
A34 物語ならある。小説と言うとちょっと恥ずかしい。
Q35 漫画も結構好きだ
A35 好き
Q36 フィクションとノンフィクション、どちらかといえば?
A36 ノンフィクション
Q37 タイトルは大事だと思う?
A37 思うけど、キャッチーである必要はない
Q38 今、欲しいと思っている本は?
A38 偉大なる自由
Q39 気に入らなかったら、売っちゃう?
A39 売っちゃう
Q40 古本屋によく行く?
A40 行く
Q41 これまでで一番の掘り出し物は?
A41 珍品には興味がない、かな。一番高かったのは、ボードレール詩集。
Q42 この世界に行ってみたいな、と思ったことがある本は?
A42 カラマーゾフ
Q43 大泣きしちゃった本、ある?
A43 飛ぶ教室
Q44 感情移入しやすいタイプ?
A44 感情移入することは滅多にない
Q45 読み終わったら、しばらく本の世界から抜け出せない
A45 ときどき
Q46 最近注目してる新人作家さんはいる?
A46 あまり読まないから、新人作家のことはよく知らない
Q47 じっくり時間をかけて読むタイプ?それとも逆??
A47 時間をかけて読むタイプ
Q48 巻数やページ数が多いものほど読む気がわいて来る
A48 逆に、ページが多いと辟易しちゃう。
Q49 あなたが思う、"本"の魅力について、教えてください
A49 媒体そのものに魅力は感じないけど、しいていうなら、作家と読者という一対一の関係が持てるところ。
Q50 最後に、あなたにとって"本"とは、どのような存在?
A50 作者の魂
 ちょっとツンツンした回答になってしまいました。
 バトン作者のかた、ごめんなさい。
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童話バトンに答えてみた

童話、自分好みに脚色しましょうバトン

Q1 「…」に入る言葉を考えて下さい。では始めます。
A1 よろしくおねがいします♪
Q2 〈桃太郎〉桃から生まれた桃太郎は…
A2 生まれついての引きこもりでした。桃から出た途端、太陽の光がまぶしくて、手をかざしました。「なんという、ものすごい光だろう」桃太郎がそう呟くのを、おじいさんが耳にしたときには、桃太郎はもう桃に帰っていま
Q3 桃太郎のお供達は…
A3 桃太郎を慕っているように見えましたが、心の底では軽蔑していました。お供達は、桃太郎と無線LAN付きハイスペックノートパソコンを載せた荷台を引きずりながら、自分達の行く末を案じていました。
Q4 鬼を倒した桃太郎は…
A4 鬼を抱え起こして、「もうこんな悪いことはやめろ。一緒に、住みよい世界をつくろうじゃないか」と諭しました。鬼は泣きながら、桃太郎の膝にすがりつき、改心を誓いました。鬼は有名なPK(プレイヤーキラー)だt
Q5 〈浦島太郎〉浦島太郎に助けられた亀は…
A5 珍種のフロリダハコガメでした。浦島太郎は喜び勇んでちかくのペットショップに向かいましたが、ワシントン条約に違反した疑いをかけられ逮捕されました。
Q6 乙姫様は浦島に玉手箱を渡し、言いました。「…」
A6 開けたらいけない、と言ってもあなたは開けるでしょうね。男ってみんなそう。わたし、ちゃんと分かっててよ。帰ってくるといって、帰ってきた男なんていないんだから!」大粒の涙が姫の睫毛からこぼれて、浦島の肩を
Q7 大陸に戻った浦島太郎は…
A7 ひとり、囲炉裏のそばで、乙姫から渡された玉手箱を開けました。箱の底にある油紙をひらくと、真っ黒な髪がひとふさありました。浦島はその髪で糸を紡いで、職人に自分の財布を織らせました。浦島はその財布を一生大
Q8 〈かぐや姫〉おじいさんは竹の中から女の子を見つけ…
A8 え、なにそれこわいと呟きました。おじいさんが切った竹を元にもどすと、切り口が元通りにくっつきました。おじいさんは自分が見たものを白昼夢だと思うことにしました。
Q9 かぐや姫が、結婚を迫る男に出した条件は…
A9 お金持ちで、将来性があって、イケメンであること(もう疲れた)
Q10 月の綺麗な夜に泣くかぐや姫。理由を聞けば、「…」
A10 うるさい、といっておじいさんを蹴とばしました。かぐや姫はひどくやさぐれていたので、ことあるごとにおじいさんとおばあさんに暴力を振るいましたがおじいさんとおばあさんは真性のマゾヒストだったので喜んでその
Q11 〈人魚姫〉海で溺れていた王子を助けた人魚姫は…
A11 王子を海に突き落としました。王子が自力で這い上がってきて、「押すなよ、絶対に押すなよ」と言ったので人魚姫はもう一度突き落としました。
Q12 魔法使いが人魚姫を人間にする代償として欲したのは…
A12 人魚姫が自分の話し相手になってくれることでした。魔法使いは人里から離れた森の奥深くで、孤独に暮していたのです。人魚姫は、人間になったら、週に一度は顔を見せると魔法使いに約束しました。
Q13 「王子を殺せ」と言われ、ナイフを渡された人魚姫は…
A13 「ほう……カミラスのクーダ2 タント……」「知ってるのか人魚姫!?」「うむ……ハンティング・ナイフの原型であり、元はヨーロッパで使われていたブッチャー・ナイフを改造したものが始まりだといわれているボウ
Q14 〈花さかじいさん〉じいさんが犬が吠えた所を掘ると…
A14 おじいさんはそこから、くさりかけた木箱を掘り起こしました。その木箱を開けると、おばあさんが昔付き合っていた男性の写真がいくつか出てきました。あなたは庭と一緒に、私の過去をほじくりかえしたわけねとお婆
Q15 隣のじいさんが、犬に命令すると…
A15 犬は素早く二本足で立ち上がりました。続いてじいさんがお手というと、犬は右の前足をじいさんの手に載せました。孫はそれを見て、すごい!と目を輝かせてさけびました。ピョートル一世は、じいさんの自慢の犬でした
Q16 隣のじいさんに犬を殺されたじいさんは…
A16 「よくも、わしのピョートル1世を殺してくれたな」(もう疲れた)
Q17 〈うさぎとかめ〉遅れているかめを見たうさぎは…
A17 寝ました
Q18 結局、うさぎとかめの勝敗は…
A18 つきました
Q19 〈さるかに合戦〉かににさるが持ちかけた交換は…
A19 待ってくれカニーって言ってみろよ
Q20 さるを懲らしめる為にかにが集めた仲間は…
A20 金でさるに買収されました
Q21 解答ありがとうございました。どうでしたか?
A21 ちょっと長いw
Q22 脚色したい童話、名作がありましたら教えてください。
A22 いばら姫だね
 つづいて童話バトンやってみました。
 バトンって文字数制限があるんですね。まったく気にせずに適当に書いてみました。
 私、なにやってんだろ。

死者の思いバトンに答えてみた

 やってみました。自分本位な回答です。

バトン

Q1 ただ、静かに近づくもの
A1 そして静かに受け入れるもの
Q2 気付くのは、己の死期
A2 悟るのは死後の余白
Q3 耳元で囁かれる、死神の声
A3 けれど言霊は 心の底に沈む
Q4 静かに告げられる声-『別れの鐘は、もうすぐ鳴り響く』
A4 誰がために 鐘は鳴る?
Q5 奪われゆく思考
A5 来るべき余白のために
Q6 奪われゆく命
A6 空に散る雪のように
Q7 残るのは、生前の記憶
A7 そして、歌われなかった歌、語られなかった言葉
Q8 アナタに呟く、最後の言葉
A8 落とし穴は、すらりと高い塔になった
Q9 そして、別れを告げる鐘は静かに鳴り響いた
A9 ……………………
Q10 これにて、終了です。お疲れ様でした~。
A10 面白かったです

霧雨魔理沙考 バイオリン、母の面影

 あの夜、少女がススキの原っぱにねそべって、トンボにお話を聞かせた夜、魔理沙も、同じ星空を眺めていました。そして、少女とはべつの、ある女の子のことを思い出していました。


 女の子は、お金持ちの家のお嬢様でした。生まれつき体が弱くて、病気がちだったので、ほとんど家から出られず、学校にも行けませんでした。町のほうから友だちがお見舞いにきてくれることもありましたが、女の子のいるお屋敷は町から離れたところにあったので、たびたびというわけにはいきませんでした。それに、お母さんは女の子がまだ赤ん坊だったころに亡くなっていました。
 お父さんは、まだ小さいのに母親をなくして、友だちとも満足に遊ぶことのできない娘に、これ以上不憫な思いはさせまいと、娘が望むものはなんでも買ってあげました。あるとき、お父さんはバイオリンを女の子に買ってあげました。お父さんは、娘を演奏家にしよう、音楽を教えようというつもりはなく、ただ気慰みになればと思ったのです。けれどそれ以来、バイオリンをひくことが女の子の一番の楽しみになりました。


 魔理沙はそのころから、魔法使いになるために勉強をしていました。寺子屋でも、まわりの子供がお習字をしているなか、ひとりぶ厚い古代言語の本を開いていることもよくありました。
 魔理沙とお父さんは、魔理沙の将来について何度か話しあいました。店で修行を積むか、せめて世の中の役に立つ学問に身を置くように、というのがお父さんの意見でした。魔理沙はいつも、尊敬しているひとが魔法使いなので、そのひとのようになりたい、としかいいませんでした。それに、魔理沙には、魔法使いになってその後どうする、という考えはまったくなかったのです。お互い歩み寄る見込みはすこしもありませんでした。

 魔理沙のお父さんは、霧雨店という大きな道具屋の主人でした。魔理沙と同じ年のころから、霧雨屋の小僧として働いていたので、放っておけば働きもせずに、へんな本ばかり読みあさっている娘のことを、よく思っていませんでした。それに、魔女は人間に厄災をもたらすという、昔からの言い伝えもありました。人間と仲のいい魔法使いの話など、おとぎ話にしかありませんでした。
 お父さんは、お店でちょっとしたことがあるたび、部屋にこもっている魔理沙を呼んで、用事を言いつけました。お父さんは魔法のことはよく分かりませんでしたが、少しでも働くことの何たるかを学んでくれれば、と考えたのです。

 魔理沙も、そんなお父さんのことをよく思っていませんでした。魔法使いにとって、時間がどれほど貴重かわかっていない。それどころか、じつの娘よりもお店のほうが大事なんだ。お店の前にたって、お客とにこやかに話す父と、一度でも自分にたいして笑いかけたことのない父とを比べると、魔理沙はいっそう、お父さんが自分のことを愛していないように思うのでした。


 女の子の家は、霧雨店のお得意さんでした。魔理沙のお父さんは、女の子の家に届け物があるたび、魔理沙に持っていかせました。魔理沙はいつも、家のひとに品物をわたすとすぐ、屋敷の北側にある大きなはんの木の下にゆきました。そこからは、変わった飾りのついたしろい出窓をとおして、バイオリンを弾く女の子の姿が見えました。

 お父さんが言いつける用事のなかで、魔理沙はこの用事だけは好きになれました。家のひとはとても気さくだし、バイオリンの音色にもひかれました。お店からだと遠いですが、お父さんに内緒でほうきに乗っていけば、のんびりする時間は十分ありました。
 ちいさな魔理沙はここで、大きなはんの木に身をもたせて、バイオリンの調べに耳を傾けたのでした。


 そんなことがつづいて、家の人とも親しくなったあるとき、魔理沙は、いつもどおり品物をわたすと、女の子のお父さんに呼びとめられて、屋敷にあがるように言われました。
「あなたが、屋敷の外で娘のバイオリンを聞いているのを知っている。娘の部屋でなら、もっとよく聞こえるでしょう」
 と、女の子のお父さんはいいました。魔理沙は、あなたなんて呼ばれたのは初めてでしたから、すっかり恐縮してしまいました。

 二階にあがって、北側の部屋のドアを開けると、そこには、いつもしろい出窓からみえていた、あの女の子がいました。その日から、魔理沙ははんの木の下ではなく、女の子のそばで、女の子のバイオリンを聴くようになりました。

 最初の日は、二人とも挨拶ていどしかできませんでしたが、女の子と魔理沙は、すこしづつ、お互いに気を許すようになりました。はじめに、バイオリンの曲や、魔法使いについての話をしました。それからうちとけてくると、お互いの話を、とくにお母さんの話をするようになりました。

 二人とも、お母さんを早くになくしていたので、お母さんの写真を持ちよって、お母さんがどんな人だったか、という話をするのでした。その話には、お父さんや家の人、お店の人から伝え聞いた話もあれば、その話にもとづいた創作ということもありました。

 魔理沙は、それが創作のときは、きっとこうだと思うけど、と前置きすることもあれば、そうでないこともありました。それは女の子にしても同じでした。そんな話をくりかえすうちに、二人は、実際には覚えていないはずの母親の面影を、はっきりとまぶたの裏に映すようになりました。

 魔理沙は、女の子と話をするようになってから、より熱心に魔術書を読むようになりました。修養のためではなく、女の子に話してきかせるためです。

 女の子は、魔理沙と話をするようになって、より長い時間バイオリンを弾くようになりました。女の子のバイオリンは、それまでとは明らかにちがってきこえました。女の子は、日々バイオリンから違った音を聞くことが、楽しくてなりませんでした。

 それから、魔理沙にきかせるために、お父さんや家の人にお母さんの話をお願いするようになりました。聞いた話が、女の子の想像とくいちがっていたときは、女の子は目に見えて機嫌が悪くなりました。たとえば、女の子がはじめて鶏肉を口にしたときのことです。

 女の子の家では、夕食だけは家の人も家族も同じテーブルを囲んで、同じものを食べる、というのが慣わしになっていました。家族といっても、女の子には兄弟もお母さんもいませんでしたし、そうなると世話をする人も少なかったので、結局女の子とお父さんを合わせて四人か五人でテーブルを囲むことになりました。

 テーブルにはいつも、女の子が望むものがならびました。といっても、ごうぜいな夕食になるわけではありません。女の子はお肉をまったく食べなかったので、たいてい、スウプに、パン、サラダ、それになにかデザートがつきました。

 家の人とお父さんは、それでものたりなかったときは、女の子に分からないように調理場にいって、ハムをサンドイッチにして食べました。それでも、ビーフブイヨンのスープや、チーズとベーコンのたっぷりかかったシーザーサラダなどが食卓に並んだときは、みな、食事に舌鼓をうったあとで、女の子は気を使って、むりにこってりしたものを献立にしたのだろうかと、考えました。

 女の子はそれほど粗食でしたが、お父さんも家の人も、そのことを苦しく思ってはいませんでした。亡くなったお母さんも、女の子と同じくらいに粗食だったからです。それに、同じテーブルを囲んで、同じものを食べることが大事なのだと、みな思っていたのです。

 それで、魔理沙と女の子が会うようになって二ヶ月ほど後の、ある朝のことです。女の子はいつになく体調がよくて、めずらしく庭に出て、散歩をしていました。女の子はほとんど外に出られなかったので、こんなことでも大きな楽しみになっていました。庭には、ほんのりと朱のさしたつつじの花壇が並び、よく茂った柿の木が木漏れ日をつくって、女の子の歩く路をまばらに染めていました。

「おはようございます、お嬢様。今日のお夕食はどうなさいます」
 と、コックさんが女の子にたずねました。このコックさんは庭師もかねていて、いまは、梯子にのぼって、屋敷のほうに伸びすぎた木の枝を切っているところでした。
「ちきんにしましょう」
 と、女の子は答えました。庭師のコックさんは梯子のうえで、思わず自分の身だしなみを確かめました。きちんとしましょう、というふうに聞こえたからです。でもすぐに、聞きまちがいに気がつきました。
「チキン、といいますのは?」
「このまえ、チラシで見たの。こういうの」
 といって、女の子は手首をまげて、九十度をつくりました。
「そうですか。味付けは、なにがよろしいですか?」
「わからないわ」
「では、お任せくださいますか」
「もちろん」

 コックさんは庭での仕事を終えると、念のためお父さんのところに相談に行きました。女の子がお肉を食べるなんて言い出すのは、初めてだったからです。コックさんから話を聞いたお父さんは、友人で、女の子を診たこともある医者に電話をしました。

「そりゃ、食べたいということは、体が欲しているということだ。あの子にはアレルギーはないんだから、心配しなくていいよ。それとも、きみは自分の娘をヤギかウサギだと思ってるんじゃないだろうな」
「わたしも、こんなことを聞くのはへんだと思ったさ。しかし、娘がお肉を食べたいなんて言い出すのははじめてなものだから」
「もっと良いほうに考えたまえ。これは、あの子の病気が快方に向かっている兆候だよ。私が担当医なら、処方箋に『チキン』と大きく書いてやるところだ」
「きみならやりかねんな。それじゃ」

 お父さんは、受話器を置きました。

「夕食は、チキンにきまった」
 とお父さんはいいました。
「味付けがきまっておりません、旦那さま」
 とコックさんがいいました。そして、鶏肉をどう調理するのがいいか、どんな味付けがいいか、二人で議論しました。こうなると、なんとしても女の子においしいと言わせたいところでした。なにしろ、今後の食卓にお肉が並ぶかどうかがかかっていたので、議論には熱がはいりました。


 いよいよ、食卓にお肉がならびました。それは、香草と、パン粉のかかったチキンを、オーブンで焼きあげたもので、添えものにマッシュポテトがついていました。女の子がチラシで見たとおりになっていました。
 女の子はまだ、フォークとナイフを一緒に使ったことがなかったので、お父さんがすぐとなりに座って、持ち方を教えてあげました。お父さんは、ナイフとフォークを使って、器用に骨から肉を切りはなすと、チキンをおいしそうにほおばりました。
 女の子は持ち方をなおしたり、お父さんの食べ方をみたりするうちに、なんとかそれらしくナイフとフォークを扱えるようになりました。
 お父さんが、おいしいか?ときくと、女の子ははっきりと、おいしい、と答えました。それで、お父さんは安心して、あとは女の子が食べるのに任せました。
 チキンは申し分ないできばえでしたし、女の子もおいしそうに食べていましたから、なにもいうことはないように思えました。

 みなが、テーブルにあるものをおおかた食べおえたころ、お父さんは、女の子のまえのチキンがもう骨だけになっているのをみて、おやと思いました。女の子はいつも少ししか食べませんでしたが、それでも、お父さんより早く食べおわることはありませんでした。しかも、使いなれないナイフとフォークを使っての食事だったので、なおさら、もうか、という気がしました。

「チキンはおいしかったか?」
 とお父さんはもう一度女の子にたずねました。
「ええ、とっても。また食べたいくらい」
 と女の子は答えました。だれも見ていませんでしたが、このときコックさんの目がきらりと光りました。
「しかし、ずいぶん食べるのがはやかったじゃないか」
「見ていらっしゃらなかったのですか」
 と、このときお皿をかたしていた家政婦さんがいいました。
「お嬢様は、とちゅうから、手をつかって召し上がったのですよ。だからはやかったのです」
「なんだ、気づいていたなら、注意しないとだめだろう」
「でも、ぜんぜんおかしく見えなかったので。旦那さまだって、隣にいて分からなかったじゃありませんか」
 お父さんは女の子のほうに向き直ると、
「次からは、ちゃんとナイフとフォークを使うんだぞ」
 といいました。すると、女の子は、
「でも、お母様だって、手で食べてらしたでしょう?」
 と、こういいました。
「お父様が召し上がっているのをみて、お母様はそうはしなかったという気がしたのです。だから、お母様がするように食べたのです。お父様の食べかたがおかしいというわけじゃないけれど……」
 それを聞いたお父さんは、一瞬、言葉を失いました。
 もう一度、
「ちゃんと、ナイフとフォークを使って食べなさい」
 といいました。それから、
「お母さんは、けしてそんな食べかたはしなかった」
 と、語気を強くして言いました。
 お父さんがそんなふうにものを言うのは、とてもめずらしいことでした。女の子はそれを聞くと、口をきゅっとむすんで、そのままなにもいわずに、二階の自分の部屋にもどりました。

「どうして、あんなことをいわれたのです」
 女の子が部屋にはいってから、家政婦さんはお父さんにいいました。
「形ばかりのお作法なんて、どうでもいいじゃありませんか。お嬢様は、奥様とおんなじで、ほんものの貴婦人でいらっしゃいます。魔理沙さんと親しくなって、ますます奥様らしくなられて……」
 お父さんは家政婦さんの言葉をさえぎって、
「真似をすればいいというものではない」
 といって、そのままだまってしまいました。

 家政婦さんは、まだ納得のいかない様子でしたが、お父さんにこう強く言われると、なにもいえませんでした。

 お父さんが自分の書斎にもどってから、食事の片付けが終わったころ、コックさんと家政婦さんは、調理場にちいさなテーブルを置いて、そこで一息つきました。そこで、コックさんは家政婦さんに、
「奥様は、薄命でいらしたので」
 と、ぽつりといいました。家政婦さんは、すぐには何のことか分かりませんでしたが、しばらくして、そうでしたね、と呟きました。

 その後、しばらくのあいだ、これまでどおりお肉のない夕食が続きました。

BGM:

ドビュッシー
亜麻色の髪の乙女

フォーレ
無言集一番

無言集三番

サティ
あなたが欲しい

ピカデリー

ジャンル : 小説・文学

テーマ : 自作小説

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