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読書記録 第三週

 トルストイ 光あるうちに光の中を進め
 太宰治 ろまん燈籠

 トルストイのこの本は、新潮社文庫の薄いものが、大抵の古本屋で見かけるので、そのたびに読んでみたいと思っていました。戦争と平和もまだ読んでいませんが、これほどの長編となるとそれなりに気構えがなければ読み通すのは厳しいです。とくに今私は精神的に張りが無くて、ついこういう読みやすそうな本を手にとってしまいます。いずれ気力が充実するサイクルが巡ってくるはずなので、今は腐らないように、出来る範囲で、自分の糧になることに取り組んでいくほうがいいでしょうね。

 と、分かってはいるのですが、私もあまりストイックではなくて、わりと怠けてしまいがちです。

 さて、トルストイの作家としての非凡は、物事を見通す眼の力にあったと、作家や批評家は語っています。
 優れた作家には、その作家にしかない洞察の仕方が必ずあります。トルストイの洞察は、まるで、物事の底の底まで、周り道をせず真っ直ぐに見通してしまう、そういう仕方でした。
 この光あるうちに光の中を進め、という本では、人間いかに生くべきか、というロシア文学らしいテーゼから、そのトルストイの洞察によって明るい答えに辿り着いています。

 太宰治のろまん燈籠、これは戦時中に太宰が書いていた短編をまとめたものです。
 時代柄、戦争に真っ向から反対したり、悲観するようなことは書かれていません。
 お世辞にも真面目には見えないおしゃべりのようなエッセィと、とても明るく軽い読後感をもたらす短編が多かった。読みやすい、とっつきやすい作品でまとまっています。
 太宰治は、こういう軽い読みものもいいですね。松岡正剛が乙一のことを、三島由紀夫にも太宰治にもなる力があると評していましたが、逆にもし太宰治が今生きていたら、乙一のようにライトのベルを書いていたかもしれないな、と考えました。
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